ふるさととくぢ集落支援員だより(1月号)

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

 昨年暮れ島根県邑南町口羽地区を訪ねました。人口約700人、高齢化率58%、20集落の地区です。

「若者は帰ってこない」と覚悟を決め、100人中100人が75歳を越えた時どうなるかを皆んなで考えられたそうです。困りごとは3つに絞られました。①地域自治が困難になる ②田畑が荒れる ③日常生活に困る。

これらを解決するために、臨機応変に代行できる「お助けセンター」として、「口羽をてごぉする会」を2010年に立ち上げられました。やる気のある者が議論して、問題点を絞り、やれるところからやり始めることになりました。

新聞配達店が高齢で廃業になれば出来る人が新聞配達を引き継がれました。今97歳のおばあちゃんがチラシの折り込みの仕事を元気にされています。

やる気のある女性10人が仕出し業を引き継ぎ、仕出し・食品加工・食用鯉の養殖販売事業に取り組んでおられます。

2019年より予約方式の有償運送事業を始め、通院や買い物など日常交通ニーズの9割は解決されているそうです。運転手は30人。

今、地区で経済が循環するよう特に木質バイオマスによるエネルギーの自給自足の研究が進められています。

過疎のむらから日本社会が確実に変わりつつある「息吹き」を感じました。

(集落支援員:市原)

集落支援員だより(12月号)

「ふるさととくぢ」3月号、4月号で佐波川美化ボランティア活動について書きました。たくさんのボランティアの方々が大やぶとなっている河川敷をきれいにされている記事でした。

今、そのすぐ上流を、山口県防府土木建築事務所(以下県土木)が発注者となって河川改修工事が行われています。正式には「佐波川総合流域防災(緊急対策)工事」で、下八坂横野から才契、小古祖にかけて来年2月28日までの予定で進められています。このあたりは大きな木があちこちにあってボランティアの方も「我々では処置することが難しい」といわれていました。

大水がでると大きなゴミが引っ掛かり災害につながりかねないところです。県土木の担当者の方が「広報誌『ふるさととくぢ』で地元の人たちが自主的な活動として河川をきれいにされている記事を読みました」と言われていました。

ボランティア活動がこの工事に影響を及ぼしたかどうかはわかりませんが「地域の方々の安全」にささやかでもつながっていればこれ以上嬉しいことはありません。

小さな活動として始められたボランティア活動とのことですが「見てくださっている人がどこかに必ずおられる」ことを改めて気付かせていただきました

   ~廣瀬橋から見た工事風景~

(集落支援員:市原)

集落支援員だより(11月号)

ある会合で「むらの自給圏構想」について話す機会がありました。日本は今、食料自給率38%、エネルギーは90%以上が輸入に頼っています。外国から食料やエネルギー素材が入ってこなくなれば‥‥・と考えただけで思考が止まります。そうなってから考えていては手の打ちようがありません。多少考える余力がある今から考えて準備することが大切であると思います。

「自らの身は、自ら守る」。「むらのことは、むら全体で守る」。これが自給圏構想です。食料自給率38%は弱味でなく強味になります。輸入原料を国内産に切り換える機会があるということです。減反農地や耕作放棄地が眠っています。空き家が急増しています。目指すは地域資源を活かした食料の地産地消、住宅の地産地消、エネルギー(熱、電気)の地産地消です。地域に根差した、地域が栄える自給圏を造ることです。  実現するためには地域の可能性に地域住民が力と英知を結集するところから始まると思います。理想の旗を高く掲げて、多くの人びとの意識を換え、地域内外の人びとから支援を集めることが出来れば、地域に自給圏が生まれ、安心して暮らせる幸せを実感できる日が必ず来ると信じています。   (挿絵:角,  文:集落支援員:市原)

集落支援員だより(10月号)

山口県が主催するソーシャルビジネスコンテスト(ぶちーCONやまぐち2019)に、今度徳地八坂に移住される村上忍さんが応募され、見事準グランプリ(準優勝)を獲得されました。ソーシャルビジネスとは、様々な社会的課題(子育て、高齢化、環境保護等)を市場としてとらえ、収益を上げながらその解決を目指す事業を言います。県内各地から24件の応募があり、一次審査を勝ち残った10名により、8月31日公開プレゼンテーションが行われました。

 村上さんは、我が子が不登校になったことがキッカケで2年前に(拠点なしに)始めたフリースクールを、この度、徳地を拠点として展開していく計画を発表されました。自然豊かな徳地、地域の方々の温かい支援に見守られながら、子どもたちが自立できる大人になる学びの場を目指すという内容でした。

 発表の場で、村上さんが徳地を最適地と選択された理由は、豊富な自然と人材に恵まれていること、更に徳地には子どもを育てる「時間」があることだと言われました。感動しました。いま、不登校の子の支援については大きな社会問題になっています。ここ徳地から、この社会的課題を解決する新しい動きが始まろうとしています。

受賞者の皆さん(前列左から3人目が村上さん)

    (集落支援員:市原)

集落支援員だより(9月号)

高齢化が進む過疎の町がお互いに助け合う(共助)気持ちを持って自分たちの交通システムを作り上げた新聞記事が目に留まりました。

北海道中頓別町という人口1800人の小集落での取り組みです。早速、町役場に電話をかけ状況を聞きました。

自分の車が空いているとき、自分の車で、車に乗りたい人を迎えに行って目的地まで連れて行ってあげるという仕組みです。車を持った人は誰でもできるわけではありません。「この車で私が運転します」とドライバー登録しておく必要があります。

一方乗せてもらう方はスマホや電話で申し込めば、その場所に最も近くにいる車が迎えに来てくれます。この車の配車の仕組みを考えた会社はアメリカのウーバーというところで、現在世界70か国、600都市以上でこのシステムが使われています。

日本では今のところ、東京都、京丹後市(京都府)と中頓別町だけです。

町では平成28年から実証実験がはじまり、当初ドライバーはボランティアで無給でした。お客様から「無料では気兼ねで乗れない」の声が多く、今はガソリン代(実費)が支払われています(これですと白タク行為にはならない)。12人のドライバーの方が最初名乗りを上げられましたが今は15人(男11人、女4人)、年齢も40歳台から70歳台。

利用者にアンケートを取ったところ98%の人が「満足」の評価とのことです。

今、徳地でも公共交通システムの検討が進められています。ここに紹介したウーバーシステムは一事例に過ぎません。世の中には徳地に合ったもっと良いシステムがあるかもしれません。検討を進める上で一つのヒントになれば幸せます。

( 集落支援員:市原 )